自動転写グラフェンでFETを実現 株式会社エアメンブレン

株式会社エアメンブレン

株式会社エアメンブレン

自動転写グラフェンでFETを実現

【2023年5月26日発表】

株式会社エアメンブレン(本社:茨城県つくば市千現2丁目1-6つくば研究支援センター内、代表取締役:古賀義紀)は防衛装備庁安全保障技術研究推進制度JPJ004596で実施する「二次元機能性原子薄膜を用いた革新的赤外線センサの研究」(研究代表:佐藤信太郎(富士通株式会社))において、自社開発の自動転写技術で積層したグラフェンで電界効果トランジスタ(FET)を動作させることに成功した。

グラフェンの説明

グラフェンは炭素原子のハニカム構造をもつ原子一個の厚さの膜である。

たいへん大きなキャリア移動度(電子の動きやすさ)を持ち、ダイヤモンドと同じくらいの硬さと熱伝導率を有する材料で、学術的な魅力に加え、近年では工業的な利用の観点からも期待が高まっている。

当初は黒鉛(グラファイト)を粘着テープで剥離することにより微小サイズのグラフェンを得ていたが、銅箔を基材とする化学気相合成で大面積品を作成可能となり、工業利用が検討できるようになった。使用する場合は銅箔から用途に応じた基材(ターゲット基材)へ移し替える「転写」と呼ばれる作業が必要である。

グラフェンの自動転写法

グラフェンは原子一個分の厚さであるため転写作業は細心の注意を要し、そのため従来は主に手作業で行われてきた。

エアメンブレンでは化学気相蒸着法(CVD)で合成した大面積グラフェンを、熱剥離シートを利用して自動で転写する手法を開発し、PETなどの柔らかい基材だけでなくシリコンやガラスなどの硬いターゲット基材へも自動でグラフェンを転写することに成功した(2021年3月22日発表)。

またこの技術を発展し、自動積層による100層の多層グラフェンの形成に成功した(2022年07月28日発表)。

グラフェンFETの作製

グラフェンをチャネル材料として利用した電界効果トランジスタ(FET)は、これまで手作業で転写したグラフェンを用いて作製されてきた。グラフェンFETはその高い移動度のため各種センサなどへの応用が期待されているが、大量生産のためには自動転写したグラフェンでFET動作させることが求められる。

エアメンブレンではこれを視野に、酸化シリコン/シリコン基板に自動転写したグラフェンを用いたFETの作製技術開発を行い、動作させることに成功した。

図1は直径100mmの酸化シリコン/シリコン基板に自動転写して積層したグラフェンをフォトリソグラフィーで加工し、金で電極を形成して作製したFETの写真である。

また図2はこのデバイス(Van der Pauw形状)の特性曲線(シート抵抗[Rs]のゲート電圧[Vg]依存性)である。

このように、グラフェンの特徴であるディラック点(電荷中性に伴うシート抵抗の最大点)を確認し、自動転写グラフェンでFET動作させることに成功した。移動度はホールが162cm²/Vs、電子が299cm²/Vsであり、自動転写グラフェンによる高移動度のFETを目指して本技術をさらに発展させていく。

図1
図2

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